静脈湖
静脈湖
静脈湖(じょうみゃくこ)は静脈の血管が拡張することでみられるようになる良性のできものです。口唇(特に下くちびる)にみられることが多いですが、その他に顔や耳、首にできる場合もあります。
見た目は数mmから1cm程度までの青紫色の小さなドーム状の膨らみとしてみられ、柔らかく触れます。静脈湖の中身は拡張した血管がメインのため、できものを押すと血管がつぶれて血液の流れが一時的に減るため色味が薄くなり、離すと元の色に戻るという特徴があります。通常は静脈湖によって痛みや痒みなどの症状があらわれることはありませんが、静脈湖の中の血管内部に血栓(血のかたまり)ができると痛みを感じることがあります。また、擦れたりぶつけたりといった刺激で出血することもあります。
静脈湖は血管の壁が脆弱になることで血管自体が拡張するとされており、その原因として複数の要素が考えられています。
年齢は原因のひとつであり、加齢による血管の老化が影響しているとされています。実際に静脈湖は一般的には50歳~60歳以上の方でよくみられる傾向があります。
もう一つの原因は紫外線です。紫外線は年単位の長い期間浴びることで血管の壁を構成する線維成分がダメージを受けるため、血管が拡張しやすくなります。その他にはくちびるを噛んだり、いじったりする刺激も静脈湖の原因となる場合があるため、そういった癖がある方は注意が必要です。
静脈湖を他のできものと鑑別するためには、通常はダーモスコピーという特殊な拡大鏡を使用します。ダーモスコピーを用いて発疹を観察することで、肉眼で見るよりも多くの情報を得ることができます。ダーモスコピーで病変をしっかりと観察したうえで、静脈湖かどうか、良性病変なのか悪性病変なのか、などを評価し、皮膚がんが疑われる場合や、静脈湖以外の疾患が疑われて診断がはっきりしない場合などは、状況に応じて皮膚生検(発疹の一部または全部を切除して組織の検査を行うこと)を行う場合があります。
当院ではVビームⅡを用いたレーザー治療あるいは、ラジオ波メスを用いた手術で治療を行っています。
VビームⅡは血液中のヘモグロビンという物質に反応して血管を破壊する効果のあるレーザー機器です。これにより静脈湖のもととなっている拡張した血管を破壊して、病変を除去します。
ラジオ波メスは一般的な電気メスの約10倍にあたる4.0MHzの高周波数帯を採用しているメスであり組織に対する集中性が高いため、過剰な熱のダメージを抑えて組織損傷を最小限にする効果があります。
VビームⅡによる治療のメリットは基本的に麻酔をする必要がないことがあげられる一方で、病変の大きさによっては1回の照射では完全に除去できず、複数回の照射が必要なる場合もあります。ラジオ波メスによる治療では、局所麻酔をする必要がありますが、Vビームに比べると1回で治療が終了となりやすいといえます。(ラジオ波メスによる治療でも病変の状態によっては再発や病変が残る可能性はあります。)
VビームⅡおよびラジオ波メスのいずれの治療も、治療後は1~2週間ほどは患部にかさぶたがついたり、ジクジクとした傷になる場合がありますが、一般的にはくちびるは傷の治りが早く、また、綺麗に治りやすい部位とされています。
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