
赤あざ
赤あざ
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赤あざとは医学的には単純性血管腫(たんじゅんせいけっかんしゅ)と呼ばれ、産まれた時点でみられます。単純性血管腫の病変では皮膚の浅い層(真皮:しんぴ)において、毛細血管という本来であれば小さく細い血管が何らかの原因により異常に拡張しています。すなわち、毛細血管の異常拡張(医学的には毛細血管奇形ともよばれます)が赤あざを肉眼的にみた時に赤く見える原因となっています。
赤あざ(単純性血管腫)の頻度はおよそ1000人のうち3人程度とされています。赤あざができる明らかなメカニズムはまだ解明されていませんが、血管を構成する細胞の遺伝子に変異があることがわかっています。
赤あざ(単純性血管腫)は盛り上がりがほとんどなく平坦で、正常な皮膚との境界があまりはっきりしていないことと、産まれた時から存在することが特徴的です。同じく子どもに多い乳児血管腫(にゅうじけっかんしゅ)という疾患でも単純性血管腫と似た見た目となる場合がありますが、乳児血管腫の場合は生後2週間以内にあらわれて目立ってくる、正常な皮膚との境界が比較的はっきりしているという違いがあります。
赤あざの色調にもバリエーションがあり、淡いピンク色で赤みが目立たないこともあれば、紫色に近い濃い色調のこともあります。赤あざの範囲は成長に比例して大きくなることはありますが、それ以上に広がっていくことは通常はありません。赤あざは自然に色が薄くなったり消えることはなく、生涯残るものになります。逆に赤あざの面積が広かったり色調が濃い場合には、思春期から成人以降でさらに色調が濃くなったり、あざが盛り上がってくる可能性があります。
特に眉間、上まぶた、鼻背(鼻すじ)、上くちびるなどの顔の正中にみられる単純性血管腫はサーモンパッチとよばれます。発症頻度は報告にもよりますが日本人のデータではおよそ20~30%程度とされ、サーモンパッチは乳児期においてもっともよくみられる血管病変となります。これらの部位にみられる単純性血管腫(サーモンパッチ)では時間とともに赤みが薄れていく傾向があります(特に上まぶたの病変は消退する傾向が強いとされています)。通常は1~2歳頃にかけて消退しはじめ、3歳頃までに消えることが多いですが、しばしば成人まで消えずに残るケースもみられます。そのため1歳半頃まで様子をみていても消えない場合、もともとの色調が濃い場合などでは自然には消退しない可能性もあるため、レーザー治療が検討されます。
また、首の後ろから後頭部にかけてみられる単純性血管腫はウンナ母斑(ぼはん)とよばれ、サーモンパッチとは異なり消退しにくいことが特徴です。およそ半数は自然に消退しないとされているため、こちらもある程度の期間の経過観察を行っても消退しない場合や、色調が濃い場合には早期のレーザー治療が検討されます。
その他には、非常にまれですが全身性の疾患の一症状として単純性血管腫がみられる場合があります。顔面の三叉神経の第1~2枝領域に単純性血管腫がみられる場合、Sturge-Weber(スタージ・ウェーバー)症候群という眼や脳にも毛細血管の奇形があることで、緑内障、てんかん、片麻痺などの症状がみられる疾患がありますので、疑わしいケースでは眼科、小児科、神経内科などでの診察が望ましい場合もあります。
赤あざ(単純性血管腫)は基本的には生命にかかわることはありません。しかし、赤あざが顔にみられる場合は、集団生活において周囲からの目が気になったり、赤あざを指摘されることでの整容的な問題がおこる可能性があります。また、思春期以降に病変の色調が濃くなったり、盛り上がる可能性もあるため、それらを防止するためにも早いタイミングでのレーザー治療が推奨されています。
赤あざの治療には当院ではVビームⅡというレーザー機器を使用しています。血管の中には赤血球という物質が流れていますが、Vビームではこの赤血球に含まれるヘモグロビンに最も反応しやすい波長の光をあてることで熱を生じさせ、熱エネルギーによって血管がダメージを受けて破壊される、塞がることで赤みが改善されます。一方で、赤あざ以外の正常な組織へはレーザー光は吸収されないため、病変以外へのダメージは少なく、安全性の高い治療でもあります。
基本的にレーザー治療はまだ皮膚が薄く、日焼けもしていない乳児期の早期から始めるほうが、少ない照射回数で治療効果も高いとされています。理由としては乳幼児では皮膚が薄いためレーザーが深い部分まで到達しやすいこと、レーザーのターゲットとなる血管もまだ幼若なため破壊しやすいこと、レーザーを照射後の皮膚の治癒が早いこと、合併症がでにくいことなどが挙げられます。また、乳児期のうちにレーザー治療を行ったほうが照射する面積も小さく済むというメリットもあります。
当院では首がすわる生後4か月前後から治療を開始しています。レーザーの照射中はとっさに動くと病変以外に照射してしまう危険性があるため、乳幼児から2,3歳前後のお子さまの場合は体を抑制して照射を行います。また、小学生以上であればお子さまにもよりますが、丁寧に説明をして納得してもらえれば治療できるケースが多いです。一方で、4~6歳前後のお子さまの場合は体も大きくなり抑制しながらの照射は難しいため、ご本人の了承が得られれば治療をすることが可能です。また、成人以降ではじめて治療を開始することも可能です。
赤あざの範囲が広い場合には全身麻酔も検討されますが、3歳未満への全身麻酔や鎮静薬の複数回の使用、長時間の使用が脳の発達に影響する可能性があることが指摘されているため、行うかどうかは十分に相談をすることが推奨されます。
日焼け止めやお化粧をされている方は治療効果が落ちてしまう可能性があるため、治療前に落としていただきます。Vビームによる痛みに関しては、レーザーが照射される直前にマイナス26℃の冷たいガスが肌に吹きつけられることで、熱による合併症がおこりにくくなるとともに、輪ゴムで弾かれる程度の痛みになるとされています。なお、痛みの緩和のために局所麻酔が必要なケースでは、麻酔クリームや麻酔テープを事前に使用する場合があります。照射時間は病変の範囲にもよりますが数分程度で終わることがほとんどです。照射後は炎症を抑える塗り薬を塗布して終了となります。
大切なこととして、赤あざの治療では1回のレーザー照射で赤みが完全に消えることは基本的にはないという点があります。通常は定期的に照射を繰り返すことで少しずつ色調が薄くなっていきますので、継続して治療を行うことがポイントとなります。赤あざに対するVビームを用いたレーザー治療は3か月に一度の間隔で保険適用で行うことができます。具体的な治療間隔については必ず3か月に一度行う必要があるわけではなく、実際にはレーザーの治療効果や皮膚の状態に応じて決めることが多いです。具体的な治療スケジュールについては、診察時に医師までご相談ください。また、上記の保険適用によるレーザー治療は小児、成人ともに行うことができますので、大人になってから赤あざの治療を希望される方もお気軽にご相談ください。
赤あざに対して良い治療効果を得るためには、通常は照射後に紫斑(しはん)といって赤紫色の内出血がみられる程度の強さ、設定で照射することが望ましいとされています。そのため、照射後は1~2週間程度の内出血がみられることが多いですが、徐々に引いていきます。内出血があるうちは軟膏処置を行うとともに、照射後しばらくは日焼け止めを使用するなど紫外線にばく露しないようにすることも大切です。(レーザー照射後の詳しいケア方法は施術時にご説明させていただきます。)
基本的には複数回の照射を繰り返して、治療効果が得られなくなってきたタイミングでいったんの治療終了を検討します。個人差はありますが、ある程度のところで治療効果が頭打ちとなって、色調の変化がみられなくなる場合があります。一般に赤あざが顔や首にある場合は治療効果が高く、足(特に足先に向かうにつれて)にある場合は治療効果が低いとされています。
また、重要な点として赤あざに対するレーザー治療では短期的にも長期的にも色調の再発が起こる可能性があることがわかっています。すなわち、一度レーザーを照射していったん色調が薄くなっても次の照射タイミングまでに再び色調が濃くなることがあったり、複数回の治療により色調が薄くなりいったん治療を終了しても、数年後に再び色調が濃くなってくる等の可能性があります。そのため、赤あざに対するレーザーは長期的な視点で治療を継続することが大切になります。
レーザー照射後は照射部位のヒリヒリとした痛み、赤み、内出血、腫れがあらわれる場合があります。特に赤あざでは治療効果を出すために内出血があらわれる場合が多いです。ただし、通常は痛み、赤み、腫れは数時間から数日程度で引いてくることが多く、内出血も数日から1~2週間で消えていきます。
照射部に強い炎症、内出血がおこった場合には、炎症後色素沈着という茶色い色調が残ることがありますが基本的には数か月で薄くなっていきます。炎症後色素沈着を予防するためには日焼け止めなどの紫外線予防も重要となります。
また、その他の合併症として水疱(水ぶくれ)、瘢痕(傷あと)、痂疲(かさぶた)、色素脱失(皮膚の色が抜けて白くなる)などがおこる場合がありますが、頻度は1%程度と稀な合併症となります。水ぶくれができた際は、その部分が後で瘢痕となる可能性もあるため、早めに受診するようにしてください。
妊娠中の方、金の糸治療を受けた方はVビームⅡによる治療を受けることができません。また、高度に日焼けをしている方、日光過敏症の方、てんかん発作の既往歴のある方もVビームⅡによる治療ができない場合があります。
Vビームによる治療が保険適用となるのは、単純性血管腫(赤あざ)、いちご状血管腫(乳児血管腫)、毛細血管拡張症です。そのため、赤あざ(単純性血管腫)は保険診療で治療することが可能です。具体的には下表のようにVビームを照射する面積によって料金が異なります。
※治療費用の他に、診察料などがかかります。
※子どもの医療費助成制度が適用されますので、千葉県にお住まいの18歳以下の自己負担は0~300円となります。医療費助成制度の対象年齢や助成費は自治体によって異なりますので、詳しくはお住いの市区町村にご確認ください。
照射面積c㎡ | 3割負担の場合 |
---|---|
10c㎡以下 | 8,140円 |
20c㎡以下 | 9,640円 |
30c㎡以下 | 11,140円 |
40c㎡以下 | 12,640円 |
50c㎡以下 | 14,140円 |
60c㎡以下 | 15,640円 |
70c㎡以下 | 17,140円 |
80c㎡以下 | 18,640円 |
90c㎡以下 | 20,140円 |
100c㎡以下 | 21,640円 |
110c㎡以下 | 23,140円 |
120c㎡以下 | 24,640円 |
130c㎡以下 | 26,140円 |
140c㎡以下 | 27,640円 |
150c㎡以下 | 29,140円 |
160c㎡以下 | 30,640円 |
170c㎡以下 | 32,140円 |
180c㎡以下(上限) | 33,640円 |
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