
ベピオゲル
ベピオゲル
過酸化ベンゾイルという成分が有効成分で、過酸化ベンゾイルは海外では50年以上前からニキビの治療に使用されています。日本では2015年にベピオゲルが発売され、2023年にベピオローションが発売され、使用できるようになりました。過酸化ベンゾイルはニキビに対しては2つの作用があります。1つは角層剥離作用です。ニキビの原因となる毛穴の出口の詰まりは皮膚の表層にある角層が分厚くなることが原因ですが、過酸化ベンゾイルは角質細胞同士の結合をゆるめて角層の剥離を促すことで、毛穴の出口を詰まりにくくする作用があります。2つ目は抗菌作用です。過酸化ベンゾイルはニキビの病態や炎症に関わっているアクネ菌などの細菌に対して抗菌作用があります。さらに過酸化ベンゾイルの特徴として、抗菌薬(抗生物質)とは異なり薬剤耐性菌の報告がありません。通常抗菌薬は長期間使用することで細菌が抗菌薬に耐性を獲得してしまう薬剤耐性菌のリスクがありますが、過酸化ベンゾイルにはこれまでに耐性菌の報告がないため、長期間安心して使用することができます。過酸化ベンゾイルは角層剥離作用および抗菌作用があるため、ディフェリンゲルと同様にコメド(白ニキビ)や赤ニキビに対して効果があります。
1日1回寝る前の洗顔後にニキビのできやすいところ全体に面で塗り広げます。しばしば塗り方を誤っている方の例として、赤ニキビだけにポイントで塗っている場合があります。ニキビの初期はコメド(白ニキビ)から始まりますので、ベピオゲル、ベピオローションの毛穴つまりを改善させる作用から考えると、コメドやコメドになる手前の状態(毛穴は詰まっていても、まだ皮脂が毛穴の中でたまり始めたばかりで見た目的にはぽつぽつしていない状態=マイクロコメドといいます)といった赤ニキビになる前の状態から予防的に治療をする必要がありますので、基本的には面で塗布するようなお薬になります。
また、ベピオゲル、ベピオローションの特性上、皮膚が乾燥しやすくなりますので薬を塗る前に化粧水や乳液で保湿をしてから使用するようにしましょう。乾燥が緩和されるとベピオゲル、ベピオローションによる治療が続けやすくなります。
化粧水や乳液はノンコメドジェニックテスト済みと記載のある商品を使用するのがおすすめです。ノンコメドジェニックテスト済みとは、ニキビの初期段階であるコメドができにくい成分で作られていることが検査で確認されていることを意味します。このノンコメドジェニックテスト済みの記載がない化粧品では、毛穴詰まりを引き起こしコメドができやすい原因となり場合がありますので、注意しましょう。
ベピオゲルを顔全体に塗る場合は人差し指の指先から第一関節までチューブから絞り出した量を塗布します。これを1FTU(フィンガーチップユニット)といい、1FTUはおよそ大人の手のひら2枚分の面積に相当します。ベピオローションの場合は手のひらに1円玉大(直径2cmほど)を出すと顔全体に塗れる量となります。ただし、ベピオゲル、ベピオローションは特に使い始めの時期に刺激感(乾燥、皮むけ、ヒリヒリ、赤み)を感じることもあるので、最初はベピオゲルの場合は1/8FTU(米粒大)や1/4FTU(あずき大)などの少量を、おでこや頬、顎などのうち1か所狭い範囲から塗り始めることが推奨されています。ベピオローションの場合も同様に最初は直径2mmほど(米粒大)からはじめて直径5mm(あずき大)、直径1cm(パール大)と使用量や塗る範囲を増やしていくとよいでしょう。数日かけて問題がなければ少しずつ塗る量と範囲を増やしていき、まずは3か月間の使用を目標に塗り続けてみましょう。最終的には1FTUの量を顔全体に塗ることを目指していくとよいでしょう。
ベピオゲル、ベピオローションはディフェリンゲルとは異なり、使用期間については特に定められてはいませんが、通常は使い始めてから1~3か月以内に治療効果があり、赤みや乾燥などの刺激症状も悪化せずに落ち着いた状態で使用できる場合は、そのまま使用を継続することがおすすめされます。ベピオゲル、ベピオローションを使用していったん症状が改善しても、そこで中止してしまうと少しずつニキビができやすい状態に戻ってしまう場合が多いですので、ニキビができやすい年齢、時期はたとえ症状がよくなった後も継続して使用してみましょう。長く継続することでニキビができにくい肌質に少しずつ変えていくことができます。
一方で、ベピオゲル、ベピオローションを使い始めてからおよそ3か月以内に症状が改善しない場合は、症状に対して薬の効果が不十分である可能性がありますので、ディフェリンゲルやデュアック配合ゲル、エピデュオゲルなど、他の毛穴の詰まりを改善させる外用薬に切り替えることも検討されます。あるいは薬の塗り方が適切でないケースもありますので、効果を実感できない場合には正しく塗れているかあらためて確認してみましょう。
ベピオゲル、ベピオローションは使い始めてから2週間以内に赤み、ヒリヒリ、皮むけ、乾燥などの刺激症状があらわれることが多いです。しかし、これらの刺激症状は通常は一時的なもので、使い続けていくうちに少しずつ軽減されていきます。そのため、使い始めの時期は少量を狭い範囲から塗り、徐々に慣らすように使っていくことがおすすめされますが、それでも刺激症状が強くみられ、使い続けるのが難しい場合は早めに医師に相談するようにしましょう。ベピオローションは乳剤性のローションで、ベピオゲルよりも保湿効果が高いため乾燥などの刺激症状がおきる頻度が少ないことがわかっています。そのためベピオゲルで刺激症状があり続けられなかった方や、もともと敏感肌の方はベピオローションに切り替えてみることも選択肢となります。
また、ベピオゲル、ベピオローションでは刺激症状とは別に100人中3人程度の頻度でアレルギー性のかぶれ(アレルギー性接触皮膚炎)がおきることがあります。そのため、使い始めた時期は問題がなくても使用を続けているうちにかぶれが強くでてきた場合、強い腫れを伴う赤みやかゆみ、ジクジクとした発疹がみられた場合は、いったん使用を中止して医師にご相談ください。
どちらも有効成分の過酸化ベンゾイルが同じ濃度で含まれていて、効果自体(一定の期間使用したときにニキビがどの程度減るか)は大きく変わりません。
違いとしてはまず剤形が透明なゲル状と白色のローションタイプという点で異なります。
塗りやすさや塗り心地については、ゲルがヒヤッとした塗り心地であるのに対して、ローションはしっとりとしていてゲルに比べて伸びがよく、患部に塗り広げやすいという特徴があります。
また、2015年に発売されたベピオゲルでは、臨床試験において12週間の使用で37.3%の方に刺激症状などの副作用がみられたのに対して、2023年発売のベピオローションでは11.9%と副作用が出る頻度が大きく改善されています。
これはベピオローションにおいて、販売元のマルホ株式会社のHARMOWELL® Moisture Technologyという油分の配合を最適化する技術により、製剤が乾いたあとも油分が表面に残ることで、水分の蒸発を防いて乾燥を防ぐといった工夫がなされていることが関係しています。
ベピオゲル、ベピオローションは、顔以外にも胸や背中などのニキビができやすい部位にも使用することができます。ディフェリンゲルやエピデュオゲルは顔のみに使用が限定されていますので、胸や背中にもニキビの症状がある場合は、ベピオゲル、ベピオローションが選択肢となります。
現在妊娠されている方、妊娠している可能性のある方のベピオゲル、ベピオローションの使用に関しては、動物実験では生殖毒性に関連する有害作用は示されておらず、有効成分である過酸化ベンゾイルの全身へのばく露量自体も非常に少ないため、妊娠中への影響は予想されないと報告されています。添付文書上は治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用すること、と記載されています。基本的には当院ではベピオゲル、ベピオローションに関しては、妊娠中の方、妊娠している可能性のある方に対しても慎重に使用することは可能と考えています。
有効成分である過酸化ベンゾイルの経皮吸収量は非常に少ないですが、塗り薬使用後の母汁への移行については不明とされています。よって、添付文書等においては授乳中のベピオゲル、ベピオローションの使用は、治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続または中止を検討することとされています。また、授乳中に使用する場合でも、乳児による偶発的な摂取を避けるために胸部への塗布は行わないこと、とされていますのでベピオゲル、ベピオローションは授乳中の使用は可能な限り控えた方がよいと考えられます。やむを得ず使用される場合は医師にご相談ください。
ベピオゲル、ベピオローションは12歳未満の小児を対象とした臨床試験は行われていませんので、原則は12歳以上から使用可能です。
ベピオゲル、ベピオローションの有効成分である過酸化ベンゾイルには漂白作用があります。そのため薬剤が髪や衣料などに触れると脱色する可能性がありますので、付着しないよう注意しましょう。
直射日光や凍結(0℃以下)を避けて、25℃以下の涼しい場所で保管してください。高温な場所で保管すると有効成分が変化する可能性があります。
切り傷やすり傷、湿疹のある部位への使用は避けるようにしましょう。
眼や唇、鼻の粘膜などには塗らずに避けるようにしましょう。特に眼の周囲に使用する場合は眼に入らないように注意して使用し、もしも眼に入った場合は直ちに水で洗い流すようにしましょう。
ベピオゲル、ベピオローションは刺激感のある外用薬のため、他の刺激性のある外用薬と併用する場合は、注意して使用するようにしましょう。
ベピオゲル、ベピオローションを塗布した部位は日光や日焼けランプなどで過度に紫外線にあたると刺激症状が悪化する場合がありますので避けるようにしましょう。
ベピオゲルの薬価は89.9 円/gです。ベピオゲル2.5%製剤は1本15g、30gの規格がありますので、3割負担の患者様の場合、「15g規格:404円」「50g規格:809円」になります。
ベピオローションの薬価は98.1 円/gです。ベピオローション2.5%製剤は1本15gの規格がありますので、3割負担の患者様の場合、「15g規格:441円」になります。
*薬剤費のみの価格です。
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