
デュタステリド
デュタステリド
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デュタステリドは男性ホルモンとして知られるテストステロンから活性型のジヒドロテストステロン(DHT)が合成される流れを抑制する働きをもつ有効成分です。このジヒドロテストステロンが男性型脱毛症(AGA)の主な原因となっているため、デュタステリドによってジヒドロテストステロンが合成されなくなることで薄毛の改善効果が期待できます。
このように、デュタステリドは男性型脱毛症に対して効果のある有効成分であり、厚生労働省の承認を得ています。そして、日本皮膚科学会によるガイドラインでも推奨度A(行うよう強く勧める)と推奨されている治療選択肢の一つです。デュタステリドは2016年に先発品であるザガーロ錠(有効成分:デュタステリド)として発売され、その後、2020年にジェネリック医薬品(後発医薬品)としてデュタステリドカプセルが発売、以降複数の製薬会社よりジェネリック医薬品が発売されています。そのため、現在ではデュタステリドは先発品、後発品のいずれも選択することができます。
デュタステリドが男性型脱毛症にどのように作用するかを知るためには、まずは男性型脱毛症のメカニズムを知ることが大切です。
毛には毛周期という成長→退行→休止という一定のサイクルがあります。髪の毛は数年間(2~6年間)かけて成長を続け(成長期)、その後2~3週間かけて退化して毛が抜けるための準備に入ります(退行期)。その後、次の新しい毛が生えるまで3~4か月の休止期間(休止期)があり、再び成長期となって新しい毛が毛根から伸びてくると、もともとの毛が抜け落ちます。これを毛周期といいます。男性ホルモンの活性型であるジヒドロテストステロンは毛根に作用して、髪の毛の成長期を短縮させて休止期にある毛を増やす働きがあります。すなわち、短縮男性型脱毛症では、
①:男性ホルモンによって髪の毛の成長期が数か月~1年ほどに短縮してしまうことで、毛が成長しきらずに細く短くなること
②:休止期にとどまる毛が増えて、新たに生えてくる髪の毛自体も減って薄毛となること
が病態の本質です。
男性ホルモンにはいくつかの種類がありますが、特にテストステロン(男性ホルモンとしての作用が弱い)から合成されてできるジヒドロテストステロン(男性ホルモンとしての作用が強い)が薄毛に強く影響しています。加えて、前頭部や頭頂部の毛はこのジヒドロテストステロンに感受性が高いことから、前頭部や頭頂部から薄毛が進行していくケースが多いです。
男性ホルモンのうち、ジヒドロテストステロンが最も男性型脱毛症に影響を与えますが、ジヒドロテストステロンがテストステロンから合成されるためには5αリダクターゼ(5α還元酵素)という酵素が必要となっています。そして、この5αリダクターゼにはⅠ型とⅡ型という2種類に分かれており、Ⅰ型、Ⅱ型の両方を阻害する作用をもっているのがデュタステリドです。一方でよく比較されるフィナステリド(先発品:プロペシア)は5αリダクターゼのⅡ型だけを阻害します。すなわち、デュタステリドによって5αリダクターゼⅠ型・Ⅱ型が阻害されることで、テストステロンからジヒドロテストステロンへの合成がフィナステリドよりも強力に抑えられ、結果的に男性型脱毛症の状態にある毛を正常の状態に近づける作用が期待できます。
デュタステリドは男性型脱毛症の診断がついている20歳以上の成人男性のみに適応があります。そのため、円形脱毛症などの他の脱毛症への適応はありません。また、20歳未満の男性での安全性および有効性は確立されていないため、20歳未満では使用することはできません。
5αリダクターゼⅠ型、Ⅱ型ともに阻害するデュタステリドのほうがフィナステリドよりも症状改善効果が高いとされています。そのため、男性型脱毛症がみられやすい部位である頭頂部や前頭部以外にも、側頭部や後頭部など広範囲に薄毛がみられて症状が進行している場合には、デュタステリドから開始することも選択肢として考慮されます。
特に前頭部の薄毛に関してはデュタステリドのほうがフィナステリドよりも優れていると報告されています。よって、前頭部の薄毛を積極的に治療したい場合にはデュタステリドから開始することがあります。
フィナステリドよりもデュタステリドのほうが副作用の頻度が高まる一方で、症状改善効果も高いとされています。そのため、副作用のリスクよりも治療効果を優先する場合はデュタステリドから開始するケースもあります。
フィナステリドによって男性ホルモンであるジヒドロテストステロンの合成が抑えられることで、性機能障害(性欲減退、勃起機能不全など)などの副作用がおこる可能性があります。デュタステリドでは5αリダクターゼのうちⅠ型、Ⅱ型どちらも阻害(フィナステリドはⅡ型のみ阻害)するため、ジヒドロテストステロンの合成がより抑えられることになります。よって、デュタステリドのほうが副作用の頻度もわずかですが上昇することが知られています。また、薬が体内で代謝されて排出されるまでの期間にも大きな違いがあります。フィナステリドはおよそ1日でほとんどが体外に排出されますが、デュタステリドは6か月間服用し続けた場合には体外に排出されるまで数か月かかってしまいます。そのため、副作用のリスクを抑えたい場合や将来的な挙児希望がある場合などはフィナステリドから開始することが推奨されます。一方で、不妊治療中の方はフィナステリドやデュタステリドではなくミノキシジル外用薬から開始することが推奨されます。
フィナステリドはデュタステリドよりも症状改善効果が低いとされていますが、症状がまだ進行していない初期の男性型脱毛症においては有効であるとする報告があります。また、開始年齢が若いことも症状改善効果が高くなる要素の一つとする報告がありますので、初期の男性型脱毛症では副作用などの観点からフィナステリドから開始することが推奨されます。
デュタステリドにより精子数が減少したとする報告もあるため、不妊治療中の方はミノキシジルなどの別の治療を選択することが推奨されます。
デュタステリド0.5mgを1日1回内服します。食事による影響を受けないため、基本的にはいつ内服しても問題ありません。飲み忘れたときは、気づいたときにその日の分を飲むようにして、2回分を一度に服用しないようにしてください。
デュタステリドの効果があらわれると、毛周期が正常化して太く長い髪の毛が生えてきますが、一連の流れには月単位での時間がかかるため、服用を始めてすぐに効果がでてくるわけではありません。個人差はあるものの早い方で服用3か月後から、通常は服用6か月ほどで抜け毛の減少、薄毛の改善(毛髪のボリューム改善)、生え際の前進などがみられるようになります。効果を実感していきます。効果をすぐに感じないといった理由で自己判断で服用を中止される方がいらっしゃいますが、毎日継続して飲み続けることで効果が出てくるため、最低でも3~6か月ほどはデュタステリドの服用を続けることが推奨されます。また、治療を終了するタイミングですが、残念ながら現代医学では男性型脱毛症を根本的に治すことができません。男性型脱毛症の治療で可能なことは症状の進行を遅らせたり、止めることとなりますので、基本的には症状が改善した後も服用を継続していただくことが推奨されます。基本的には内服をやめると3~6か月で効果が消失し、およそ中止してから1年ほどで服用を開始する前の状態に戻るとされています。
国内の臨床試験では男性型脱毛症の患者にデュタステリド0.5mgを半年間投与したところ、フィナステリドに比べて髪の毛の太さや毛髪数の改善率についてはデュタステリドのほうが優れていたという結果が報告されています。また、特に前頭部の脱毛においてデュタステリドのほうが改善度が高いという評価もされています。一方で担当医による写真評価や硬毛数の増加率については明らかな差がなかったため、フィナステリドとデュタステリドは治療効果の差が見た目でわかるほどの違いはない可能性があるとも言えます。こうした点を踏まえて、どこまで積極的に治療をしたいか、副作用の頻度の差なども考慮してどちらを選択するか検討する必要があります
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