
抗ヒスタミン薬(アレルギー治療薬)
抗ヒスタミン薬(アレルギー治療薬)
蕁麻疹やアレルギー性鼻炎などのアレルギー反応に対してよく用いられる飲み薬です。アレルギー反応においては肥満細胞という細胞からヒスタミンが放出され、皮膚や鼻、眼などに存在するH1受容体(ヒスタミンH1受容体)という部分にヒスタミンが結合します。それにより蕁麻疹や痒み、鼻水、くしゃみ、目の痒みなどの症状が引き起こされます。抗ヒスタミン薬ではヒスタミンがH1受容体に結合することを阻害することで、これらの症状を抑制する作用があります。
皮膚科においては、上記のように蕁麻疹はもちろんのこと、アトピー性皮膚炎や湿疹など様々な皮膚疾患に伴う痒みに対しても抗ヒスタミン薬は使用されています。
開発された年代により第一世代抗ヒスタミン薬と第二世代抗ヒスタミン薬に分けられます。第一世代は初期に開発された飲み薬で、速効性があるものの効果が持続する時間が短いことが特徴です。加えて、脳へも薬が一部移行してしまうため、脳内にあるH1受容体へのヒスタミンの結合が阻害されることで眠気や集中力・判断力の低下などの副作用があります。
その他にも、尿閉(尿が出にくくなる)、口喝(口が乾きやすくなる)、便秘などの副作用もあり、前立腺肥大症や緑内障がある方には使用することができません。
第二世代抗ヒスタミン薬は1983年以降に発売された薬で、第一世代の弱点ともいえる脳への作用(眠気、集中力の低下など)や尿閉、口喝などの副作用が少なくなるよう改善されています。さらに、1日1回の内服でも効果が長時間続いたり、治療効果自体も優れた製剤が発売されるようになってきています。
第二世代抗ヒスタミン薬は現時点で15種類ほどあり、1日1回の内服でよいものから1日2-3回内服するもの、食後ではなく空腹時や就寝前に内服するものなど用法用量も様々です。
また、第二世代抗ヒスタミン薬では眠気の副作用が少なくなったとはいえ、一部の飲み薬では軽度の鎮静作用があるため、添付文書に「自動車の運転など危険を伴う機械の操作には注意すること」、あるいは「自動車運転や危険を伴う機械操作への従事を控える(不可)」といった記載がある薬剤もあります。
抗ヒスタミン薬は開発された年代による分類以外にも化学構造式で分類することができます。構造による分類では三環系、ピぺリジン骨格、ピペラジン骨格という3種類に分けることができます。そのため、ある種類の抗ヒスタミン薬で効果が出にくい時、あるいは副作用が気になる時は、別の化学構造式の抗ヒスタミン薬に変更してみることで、効果を実感できる場合もあります。
一般的には妊娠4週からおよそ3か月間は、胎児の重要な器官が作られ、薬の影響を受けやすい時期です。また、授乳中においても母乳を介して赤ちゃんに薬が移行する場合もあるため、妊娠中、授乳中の方は薬の使用に関しては医師や薬剤師に相談をしましょう。
一方で、国立成育医療センターに設置されている妊娠と薬情報センターや日本産婦人科医会によると、以下のように報告されています。
・現在までにわが国で承認されている抗ヒスタミン薬はすべて催奇形性の報告はない。
・第2世代の抗ヒスタミン薬の中で妊婦の使用経験の蓄積と弱いエビデンスがあるロラタジン(先発品:クラリチン)とセチリジン塩酸塩(先発品:ジルテック)が一選択薬となる.さらに理論的にはそれらの体内活性化物であるデスロラタジン(先発品:デザレックス)、レボセチリジン(先発品:ザイザル)も同様に安全と考えられるが、現時点でエビデンスはない。
・授乳婦に対して抗ヒスタミン薬はいずれも母乳へ移行し得るため妊婦と同様の薬剤が推奨される。
・授乳中に安全に使用できると考えられる抗ヒスタミン薬としてデスロラタジン(先発品:デザレックス)、フェキソフェナジン(先発品:アレグラ)、ロラタジン(先発品:クラリチン)がある。
以上を踏まえて、当院では妊娠中の方ではクラリチン、ジルテック、授乳中の方ではデザレックス、アレグラ、クラリチンを中心に処方をしております。
具体的にどの薬剤を処方するかは診察時に相談をさせていただきます。
では、実際にはどのような基準で抗ヒスタミン薬を選択すればよいでしょうか。
前提として眠気が出やすい=効果も高い、というわけではありません。眠気の出やすい鎮静性のタイプだからアレルギー症状や痒みを抑える作用も強い、という相関はないとされていますので、通常は服用する回数が少なく飲み忘れしにくいものや、眠気の副作用が少ないものから開始することを検討します。
その他にも、薬を内服してから効果が出てくるまでの時間や、効果の持続時間、効果が思うように出なかった場合に倍の量で内服できるか(抗ヒスタミン薬の種類によっては添付文書上、症状に応じて通常の倍量で内服することが認められています)、車の運転の可否など、抗ヒスタミン薬を選択する上での判断要素には色々なものがあります。
最後に、残念ながら誰にでも万能に高い効果を発揮できるような抗ヒスタミン薬というものはなく、個人ごとに症状に合う抗ヒスタミン薬は異なるというケースを多く経験します。
上記のように一概に抗ヒスタミン薬といっても様々な種類があります。そのため、当院では患者様の症状やライフスタイルに応じて薬剤を選択しつつ、効果が思うように出ない場合は途中で薬剤変更をしながら最終的には効果と副作用のバランスが取れた、ご自身に合う薬剤を選んでいけるよう心掛けて診療しています。
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