
モイゼルト軟膏
モイゼルト軟膏
2022年6月にモイゼルト軟膏0.3%製剤および1%製剤が発売されました。生後3か月以上から使用することができるため、ステロイド外用薬以外のアトピー性皮膚炎治療外用薬では最も早い時期から使用可能な軟膏です。生後3か月~14歳の小児では症状に応じて0.3%製剤または1%製剤のいずれかを使用することができます。15歳以上では1%製剤を使用することができます。
*低出生体重児、新生児及び3か月未満の小児を対象とした臨床試験は実施していないため、3か月未満の小児には使用することはできません。
モイゼルト軟膏はホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害薬というステロイド外用薬やプロトピック軟膏、コレクチム軟膏とは異なる新しい作用をもつ塗り薬です。
PDE4はアトピー性皮膚炎の炎症に関わる免疫細胞の内部にある物質で、皮膚の炎症を抑えてくれるシグナル(cAMP:サイクリックAMPといいます)を分解してしまう働きがあります。そのためPDE4が増えると皮膚の炎症を抑えるシグナルが減ることで、アトピー性皮膚炎の状態が悪化してしまいます。アトピー性皮膚炎の患者様では、このPDE4が免疫細胞の内部で増えていることが知られていますので、モイゼルト軟膏はPDE4を阻害して皮膚の炎症を抑えるシグナルを増やすことで効果を発揮します。
モイゼルト軟膏はアトピー性皮膚炎の炎症に関わる免疫細胞において、炎症を抑えるシグナルが減らないようにしてくれる作用があり、免疫細胞の過剰な反応を調節してくれる塗り薬です。そのため、皮膚炎を速やかに鎮静化させる作用はステロイド外用薬に比べると弱いですが、副作用が少ないため長期間使用しやすい塗り薬です。
また、モイゼルト軟膏は生後3か月から使用することができるため、他の非ステロイド外用薬であるプロトピック軟膏、コレクチム軟膏に比べて、最も早い段階からアトピー性皮膚炎の患者様に使うことができる点もメリットと言えます。
通常モイゼルト軟膏の使うタイミングとしては、プロトピック軟膏やコレクチム軟膏と同様に、アトピー性皮膚炎の炎症が強い時期にはステロイド外用薬で速やかに炎症を抑え(寛解導入療法)、皮膚炎がある程度落ち着いた段階でモイゼルト軟膏に切り替えて使用することが多く、アトピー性皮膚炎が落ち着いた状態を維持していく寛解維持療法に向いています。
また、モイゼルト軟膏の効果が出てくる時期ですが、使用を開始して1週間後くらいから少しずつ効果を実感でき、1か月かけて徐々に効果が上がってきます。
大人はモイゼルト軟膏1%製剤を1日2回、適量を患部に塗ります。
小児はモイゼルト軟膏0.3%製剤を1日2回、適量を患部に塗ります。症状によってはモイゼルト軟膏1%製剤を1日2回で使用することも可能です。ただし、小児の場合はモイゼルト軟膏1%製剤で症状が改善した場合には、0.3%製剤に切り替えることがあります。薬の切り替えについては医師または薬剤師と相談をしてください。
軟膏の塗布量の目安としてFTU(フィンガーティップユニット)があります。
これは大人の人差し指の指先から第一関節まで2.5cmほど軟膏をチューブから絞り出すと、モイゼルト軟膏の場合約0.35gとなり、大人の手のひら約2枚分の面積に塗ることができるというものです。
具体的な塗布量は年齢や部位によっても異なりますので、下の図も参考にしてください。
また、塗り方のポイントとして軟膏を患部にのせるように塗りましょう。ティッシュが皮膚にくっつく程度が目安となります。逆にすり込むように塗ると摩擦で患部が刺激されるため、皮膚炎が悪化してしまいますので注意してください。
モイゼルト軟膏の使用により症状が改善した場合は、継続の必要性について個別に検討しています。そのため、漫然と長期にわたって使用しないようにしましょう。
モイゼルト軟膏1%製剤で治療を開始してから4週間以内に症状の改善がみられない場合は、一旦使用を中止して医師に相談するようにしてください。
目立った副作用は少なく、安全性の高い塗り薬です。また、併用してはいけない薬も特にありません。
添付文書に記載されている副作用のうち最も多いものでも塗布部位の色素沈着(頻度1.1%)、他に毛包炎(おでき)、そう痒症(痒み)、ざ瘡(ニキビ)、接触皮膚炎(かぶれ)、膿痂疹(とびひ)などがあります。
使用中にもしも気になる症状があらわれた場合は、医師または薬剤師に相談するようにしましょう。
ニキビやヘルペスなどの皮膚感染が起きている部位は避けて塗るようにしましょう。やむを得ず感染部位にモイゼルト軟膏を使用する場合には、あらかじめ感染症の治療を行うか、感染症の治療と併用して使用します。
動物実験(雌ラット:皮下)で、通常使用量の263倍で胚もしくは胎児の死亡率高値と胎児の心室中隔膜性部欠損が報告されています。そのため、現在妊娠中の方もしくは妊娠している可能性のある方はモイゼルト軟膏は使用しないほうが望ましいとされていますので、使用に関しては医師に相談をするにようにしてください。
また、妊娠する可能性のある方はモイゼルト軟膏を使っている間は、適切に避妊する必要があります。避妊期間はモイゼルト軟膏の血中消失半減期と個体差などを考慮して、使用終了してから最低でも2週間の避妊が推奨されています。
動物実験(雌ラット:皮下)において、乳汁中への移行(乳汁中濃度は血液中濃度の約14倍)が報告されています。そのため、授乳中の方は治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮し、授乳を継続するか中止するかを決める必要があるので、医師に相談するようにしてください。
モイゼルト軟膏1%(10gチューブ) 451円
モイゼルト軟膏1%(28gチューブ) 1263円
モイゼルト軟膏0.3%(10gチューブ) 421円
モイゼルト軟膏0.3%(28gチューブ) 1179円
*モイゼルト軟膏には後発医薬品はありません。
*いずれも公的保険が適用された3割負担の価格を記載しています。
*薬剤費のみの価格です。
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