
老人性イボ
老人性イボ
老人性イボは医学用語では脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)とよばれ、老人性という頭文字がさすように、いわゆる加齢や老化によってできる良性のできものです。その他には紫外線や遺伝なども発症に関わっていると考えられています。老人性イボは早ければ20~30歳代からみられ始め、年齢とともに徐々に増えてきて、80歳以上の高齢の方ではほとんど全員にみられるようになります。紫外線や加齢によってできる平坦なシミ(老人性色素斑:ろうじんせいしきそはん)が少しずつ盛り上がって老人性イボになるケースも多くみられます。
老人性イボは顔や頭皮、体幹などによくみられ、表面はやや硬く細かい粒状の外観をしていることが多いです。しばしば皮膚に粘土細工を貼り付けたような見た目と表現されます。色味は薄い茶色から濃い茶色、黒色など様々で、通常は痛みや痒みはありませんが、まれに老人性イボに炎症が加わるとイボが赤くなったり痒みを自覚する場合があります
典型的な老人性イボであればダーモスコピーと呼ばれる特殊な拡大鏡で診断します。
しかし、なかには良性、悪性含めて様々なできもの(腫瘍)と鑑別が必要な場合があります。そのようなケースでは必要に応じてできものの一部または全部を切除して病理組織検査を行う皮膚生検という検査を行うことがあります。
老人性イボは良性のできものであり悪性化することはありませんので、必ずしも治療が必要な疾患ではありません。しかし、イボが大きくて引っかかる、擦れる、出血する、見た目が気になるなどがあれば治療することもできます。
当院では老人性イボの治療方法には液体窒素による凍結療法、高周波メスによる除去、通常のメスによる切除を採用しています。
液体窒素という空気中の窒素をマイナス196度の液体にしたものを用いた治療です。液体窒素を病変に当てると、病変の細胞が凍結して壊死します。壊死した細胞は時間とともにかさぶたとなって剥がれ落ちることで、イボが少しずつ小さくなっていきます。イボのサイズが小さければ1~2回でとれることもありますが、大きいサイズのものでは複数回かかることもあるため、高周波メスで除去する選択肢も検討されます。凍結療法による処置後は凍傷ややけどと同じような反応となりますので、施術中には痛みがあり、施術後も皮膚の炎症や炎症後の色素沈着がおこる場合があります。また、施術後は1~2日ほど痛みが続く場合がありますが、水ぶくれや血豆になっていなければそのままの状態で日常生活をしても大丈夫です。一方で、凍結療法による反応が強く起こると水ぶくれや血豆になることもあります。水ぶくれや血豆となった場合は症状に応じて適切に対応いたします。
この液体窒素による凍結療法は麻酔をする必要はなく、診療中でも簡単に施術ができます。また、保険診療では週に1回の頻度で行うことができます。
ラジオ波という一般的な電気メスの約10倍にあたる4.0MHzの高周波数帯を採用しているメスを使用します。組織に対する集中性が高いため、過剰な熱のダメージを抑えて組織損傷を最小限にしてのイボの組織を蒸発させて除去する方法です。局所麻酔が必要ですが、イボの除去と同時に止血もできるため出血が少ないこと、縫合や抜糸も不要であることがメリットです。
通常のメスによる切除では線状の傷跡となりますが、高周波メスによる除去の場合はイボの形に沿った傷跡となり、術後は傷が治るまでは軟膏やテープによる処置を行います。
イボを周囲の皮膚を含めてラグビーボールのような形に沿ってメスで切除し、糸で縫合して傷をふさぐ方法です。メリットは縫合して傷がふさがった状態で終了するため、他の治療と比べて傷の治りが早いことがあげられます。一方で傷跡を歪みのない線とするため、イボの大きさよりも線状の傷跡の長さが長くなることがデメリットとしてあげられます。
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