
毛細血管拡張症
毛細血管拡張症
目次
毛細血管拡張症とは真皮(しんぴ)という皮膚の浅い層にある毛細血管が拡張したまま元に戻らない状態が続くことで、肉眼的に赤みや細い血管そのものがみえる状態をいいます。
湿疹やかぶれなどにより皮膚に赤みがある場合は、皮膚の炎症により一時的に患部の血流量が増えていることが原因です。そのため、ステロイド外用薬などの塗り薬による治療を行うことで短期間で赤みは引いていきます。しかし、毛細血管拡張症の場合は通常は患部に炎症がおきているわけではないため、ステロイド外用薬などの炎症を抑える塗り薬などを使用しても症状が改善しない、また、自然には治癒しないことが特徴です。
毛細血管拡張症の原因は一つだけではなく、さまざまな要因が関係していると考えられています。特に加齢、喫煙、紫外線への慢性的なばく露、肌のタイプが色白であることは、毛細血管拡張症に関連があるとする多くの報告があります。これらの要因がどのように毛細血管拡張症を引き起こすかというメカニズムはまだ明らかではありませんが、喫煙や紫外線が皮膚の線維成分やDNAにダメージを与え、皮膚の萎縮(皮膚が薄くなる)が引き起こされることで血管が目立ちやすくなること、血管の壁自体が脆弱になり拡張しやすくなること、毛細血管を増やしたり拡張させる物質が活性化されることなどが、毛細血管拡張症の発症に関係していると考えられています。また、色白の肌質も紫外線による影響を受けやすくなるといった部分で関係しているとされています。すなわち、顔にみられる毛細血管拡張症は、しわ、たるみ、色素沈着などと同様に皮膚の老化の特徴の一つであるとも考えられています。
また、上記以外でも妊婦の方、酒さや肝臓疾患、慢性的にステロイドを使用している方なども毛細血管拡張症を引き起こす原因となる場合があります。
そして、寒暖差、アルコール摂取、熱い飲食、辛い食べ物などは毛細血管拡張症を悪化させる可能性があります。
毛細血管拡張症は病変の見え方によって以下のような複数のタイプに分類されます。
患部の盛り上がりがなく平坦で、赤色や青紫色の枝分かれがない血管が拡張している状態。赤色の毛細血管拡張症は顔の特に鼻、頬の中央部、あごによく見られますが、脚にできることもあります。一方で、青紫色の毛細血管拡張症は脚によくみられます。
単純型と同様に患部は平坦で盛り上がりはなく、赤色や青紫色の血管が拡張しているが、血管が枝分かれしてみられる状態。
中心の血管から360度の全方向にクモの足のように血管が拡張している状態。妊娠によるホルモンバランスの変化、肝臓疾患に伴ってあらわれることがあります。クモ状血管腫ともよばれます。
皮膚の表面からわずかに盛り上がりがあり、他のタイプとは異なりできもののようなぽつぽつとした形をした血管拡張の状態。膠原病(こうげんびょう)の方にしばしばみられます。
毛細血管拡張症の治療には当院ではVビームⅡというレーザー機器を使用しており、保険適用で治療することができます。
Vビームが毛細血管拡張症に効くメカニズムとしては、血管の中には赤血球という物質が流れていますが、Vビームではこの赤血球に含まれるヘモグロビンに最も反応しやすい波長の光をあてることで熱を生じさせ、熱エネルギーによって血管がダメージを受けて破壊される、塞がることで赤みが改善されます。一方で、毛細血管拡張症以外の正常な組織へはレーザー光は吸収されないため、病変以外へのダメージは少なく、安全性の高い治療でもあります。
日焼け止めやお化粧をされている方は治療効果が落ちてしまう可能性があるため、治療前に落としていただきます。Vビームによる痛みに関しては、レーザーが照射される直前にマイナス26℃の冷たいガスが肌に吹きつけられることで、熱による合併症がおこりにくくなるとともに、輪ゴムで弾かれる程度の痛みになるとされています。なお、痛みの緩和のために局所麻酔が必要なケースでは、麻酔クリームや麻酔テープを事前に使用する場合があります。照射時間は病変の範囲にもよりますが数分程度で終わることがほとんどです。照射後は炎症を抑える塗り薬を塗布して終了となります。
毛細血管拡張症に対するVビームの治療回数はおよそ1回~5回ほどが目安となりますが、治療効果が出にくいケースでは10回程度かかる場合もあります。一般的には拡張している血管の太さが太いほうが少ない回数で効果を実感しやすく、拡張血管が細く一様な赤みとしてみられる場合はより多い回数が必要となる傾向があります。毛細血管拡張症に対するVビームを用いたレーザー治療は3か月に一度の間隔で保険適用で行うことができます。具体的な治療間隔については、必ず3か月間隔を空ける必要があるわけではなく、短期間での治療を希望される場合はダウンタイムの程度にもよりますが、2週間以上間隔を空けていただければ次の治療は可能です。(その場合は自由診療での治療となります)
具体的な治療スケジュールについては、診察時に医師までご相談ください。
レーザー照射後は照射部位のヒリヒリとした痛み、赤み、内出血、腫れがあらわれる場合があります。ただし、通常は痛み、赤み、腫れは数時間から数日程度で引いてくることが多く、内出血も数日から1~2週間で消えていきます。
照射部に強い炎症、内出血がおこった場合には、炎症後色素沈着という茶色い色調が残ることがありますが基本的には数か月で薄くなっていきます。炎症後色素沈着を予防するためには日焼け止めなどの紫外線予防も重要となります。
また、その他の合併症として水疱(水ぶくれ)、瘢痕(傷あと)、痂疲(かさぶた)、色素脱失(皮膚の色が抜けて白くなる)などがおこる場合がありますが、頻度は1%程度と稀な合併症となります。水ぶくれができた際は、その部分が後で瘢痕となる可能性もあるため、早めに受診するようにしてください。
妊娠中の方、金の糸治療を受けた方はVビームⅡによる治療を受けることができません。また、高度に日焼けをしている方、日光過敏症の方、てんかん発作の既往歴のある方もVビームⅡによる治療ができない場合があります。
Vビームによる治療が保険適用となるのは、単純性血管腫(赤あざ)、いちご状血管腫(乳児血管腫)、毛細血管拡張症です。そのため、毛細血管拡張症は保険診療で治療することが可能です。具体的には下表のようにVビームを照射する面積によって料金が異なります。
※治療費用の他に、診察料などがかかかります。
※子どもの医療費助成制度が適用されますので、千葉県にお住まいの18歳以下の自己負担は0~300円となります。医療費助成制度の対象年齢や助成費は自治体によって異なりますので、詳しくはお住いの市区町村にご確認ください。
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