
プロトピック軟膏
プロトピック軟膏
アトピー性皮膚炎の治療薬として、ステロイド外用薬の次に開発された薬です。1999年にプロトピック軟膏0.1%が16歳以上を対象に発売され、2003年にはプロトピック軟膏0.03%小児用が2歳~15歳までの小児を対象に発売されました。なお、安全性が確立していないため、2歳未満の小児には使用できません。
タクロリムスという免疫抑制剤が有効成分であり、ステロイドとは異なる作用の仕方で皮膚炎のある部位に起こる過剰な免疫反応を抑え、効果を発揮します。
ステロイド外用薬に比べて皮膚炎を鎮静化させる作用は弱い一方で、副作用が少ないため寛解維持療法に向いています。
ステロイド外用薬の強さは1~5段階に分類されますが、プロトピック軟膏の皮膚の炎症を抑える強さは、このうち下から2番目のミディアム(普通)から真ん中のストロング(強い)と同じくらいの強さです。ステロイド外用薬以外でアトピー性皮膚炎に使用できる外用薬には、プロトピック軟膏の他にコレクチム軟膏やモイゼルト軟膏などがありますが、それらと比較してもプロトピック軟膏は炎症を抑える作用は強いとされています。
プロトピック軟膏の有効成分であるタクロリムスは他の外用薬の有効成分と比べて粒が大きいため、皮膚の炎症によりバリア機能が崩れた部分からはタクロリムスが吸収されるものの、正常な皮膚からはほとんど吸収されないという特徴があります。
そのため、プロトピック軟膏には「効くべきところには効いて、炎症がよくなった部分や、もともと正常な皮膚にはほとんど吸収されない」という点が、ステロイド外用薬とは異なるメリットと言えます。
また、プロトピック軟膏にはステロイド外用薬を長期間外用することでみられる皮膚萎縮(皮膚が薄くなる)、毛細血管拡張(塗っている部分に赤みを帯びてくる)などの副作用がないため、ステロイド外用薬による副作用が出やすい顔や首などの症状に対しては特に良い適応と考えられます。
大人ではプロトピック軟膏0.1%を1日1~2回、適量を患部に塗ります。1回あたりの使用量は5g(チューブ1本分)までです。
子ども(2歳~15歳)ではプロトピック軟膏0.03%を1日1~2回、適量を患部に塗ります。1回あたりの使用量は年齢により下表のように上限が決まっています。(低出生体重児、新生児、乳児または2歳未満の小児を対象とした臨床試験は実施していないので、2歳未満の小児には使用できません。)
また、1日2回塗布する場合はおよそ12時間間隔で塗布するようにしましょう。
塗る量の目安としては、人差し指の指先から第一関節までの長さ(1FTU:フィンガーティップユニット→リンク?)でチューブから軟膏を絞り出すと、大人の手のひら2枚分の面積に塗ることができます。
使用を中止する目安として、2週間以内に発疹がよくならない場合や、悪化する場合にはいったん使用を中止して医師に相談をしてください。
プロトピック軟膏の使い始めの時期に、塗った部分の刺激感(ヒリヒリ感、ほてり、かゆみ、痛みなど)が出る場合があります。これは有効成分であるタクロリムスがバリア機能の崩れている皮膚に吸収される際に、刺激感の原因となる物質が作られて、それが皮膚の知覚神経(痛みや痒みなどを感知する神経)に作用してしまうためです。しかし、このような刺激感はずっと続くわけではなく、外用を続けていくうちに徐々に刺激感の原因物質が作られなくなることで知覚神経への作用も薄まります。そして、外用に伴って発疹がよくなってくるとプロトピック軟膏の有効成分自体が皮膚に浸透しなくなってくることも相まって、通常は1~2週間でほとんどの方が刺激感なく使用を継続できるようになります。ただし、ときに使用期間中ずっと刺激感が続くケースもありますので、その場合は医師に相談するようにしてください。
プロトピック軟膏による初期の刺激感は添付文書によると、
・プロトピック軟膏0.1%→熱感(灼熱感、ほてり感等):44.3%、疼痛(ヒリヒリ感、しみる等):23.6%
・プロトピック軟膏0.03%小児用→熱感(灼熱感、ほてり感等):36,5%、疼痛(ヒリヒリ感、しみる等):16.3%
と稀な副作用ではなく、ほとんどの方が感じるものです。そのため、もしも塗り始めの初期にヒリヒリしたりほてったりしても、薬が自分に合っていないとか、効いていないということではないことが多いですので、あまり心配せずに使用を続けてみましょう。
プロトピック軟膏による刺激感は薬の特徴上ある程度は仕方がない部分であるものの、刺激感を感じる時期を過ぎれば非常に使い勝手のよい塗り薬となりますので、最初の1~2週間は頑張って使用してみることを推奨しています。
入浴後などで体にほてりがあると刺激感が強くなるため、入浴後は体のほてりがおさまってから外用するようにしましょう。
炎症が強い部分は皮膚のバリア機能が崩れているため、最初からプロトピック軟膏を使用すると、有効成分のタクロリムスが多く浸透するため刺激感も強く出やすくなります。そのため、最初に適切な強さのステロイド外用薬を数日ほど使用して、ある程度炎症が落ち着いてバリア機能を改善させてからプロトピック軟膏を使用することで、刺激感を減らして使用することができます。
保湿剤を先に塗ってからプロトピック軟膏を塗ると刺激を感じにくいとされています。
プロトピック軟膏を外用したところを冷やすことでも刺激感が抑えられるとされています。
長期の間プロトピック軟膏を連続使用することで、ニキビや酒さ様皮膚炎(酒さのような顔の赤みとぼつぼつの症状)を引き起こすことがあります。もしもプロトピック軟膏を長期に使用していく場合には外用薬の塗る頻度を週2回などと少なくすることも選択肢としてあります。あるいはプロトピック軟膏を使用しても症状が安定しない場合は医師に相談しましょう。
患部がジクジクしている部分(潰瘍や盛り上がっているびらん)には使用しないようにしましょう
プロトピック軟膏を塗った部位には長時間紫外線を浴びないようにしましょう。日常生活での紫外線は問題ありませんが、海や山などへ行く前は使用せず、帰宅後に使用しましょう。
以下に当てはまる場合はプロトピック軟膏の使用が禁止されています。
・患部に潰瘍や局面を形成しているびらんのある方
・重症の腎障害や高カリウム血症の方
・魚鱗癬様紅皮症を示す疾患(Netherton症候群など)の方
・プロトピックの成分にアレルギーを起こしたことがある方
・PUVA療法などの紫外線療法を実施中の方
プロトピック軟膏0.1% 112円(1本5gチューブあたり)
プロトピック軟膏0.03%小児用 125円(1本5gチューブあたり)
プロトピック軟膏0.1%には後発医薬品としてタクロリムス軟膏0.1%があり、価格は55~61円になります。
プロトピック軟膏0.03%小児用にはまだ後発医薬品がありません。
*いずれも公的保険が適用された3割負担の価格を記載しています。
*薬剤費のみの価格です。
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