とびひとは？

とびひは正式な病名は伝染性膿痂疹（でんせんせいのうかしん）といい、細菌による皮膚の感染症です。患部にはとびひを引き起こしている細菌が増殖しているため、そこに接触することで別の部位にどんどんと病変が広がっていきます。それが火事の飛び火のようにすぐに広がっていくことからとびひと俗称されるようになりました。
乳児や幼児など子どもに多い皮膚疾患ですが、子どもと触れ合う機会のある大人にもしばしばみられます。

とびひの原因

とびひの原因となる菌は主に黄色ブドウ球菌（おうしょくぶどうきゅうきん）や化膿レンサ球菌（かのうれんさきゅうきん）という種類の細菌が多いです。いずれの細菌も健康な人の皮膚表面や鼻の中、のどの中などにもともと存在しているため、常在菌と呼ばれています。しかし、湿疹や虫刺され、あせもなど、皮膚に細かい傷があると細菌が皮膚の中に侵入してきます。その後、皮膚の免疫機能で排除されなければとびひを発症してしまいます。

とびひを発症しやすいケース

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎の患者様では、皮膚のバリア機能が低下しているためとびひを発症しやすい傾向があります。普段からこまめに保湿をし、湿疹ができたら早めに治すことが予防となります。

虫刺され、湿疹（かぶれ）、あせもなどの皮膚炎

いずれも皮膚に炎症がおこり、痒みによって掻くことで皮膚表面に細かい傷ができてしまうことでとびひを発症しやすくなります。こちらも皮膚炎を早く治すことが大切になります。

とびひの症状

とびひには大きく分けて2つのタイプに分かれます。1つ目は水ぶくれができるタイプで水疱性膿痂疹（すいほうせいのうかしん）といいます。2つ目はかさぶたができるタイプで痂皮性膿痂疹（かひせいのうかしん）といいます。それぞれ症状や発疹がみられやすい部位、年齢などの特徴が違います。

水疱性膿痂疹（すいほうせいのうかしん）

とびひとして受診されるケースの多くがこちらの水疱性膿痂疹です。原因となる菌は主に黄色ブドウ球菌という細菌で、黄色ブドウ球菌の出す毒素により皮膚の表層にある細胞同士の結合が切断されて水ぶくれやびらん（ジクジクした皮むけ）があらわれます。経過としては最初に痒みや赤い発疹を伴う水ぶくれができて、それが破れることでびらんを生じます。水ぶくれの中身には黄色ブドウ球菌が多く含まれているため、患部を触った手で別の部位を触るとどんどんと病変が広がってしまいます。水ぶくれが乾燥してびらんとなった部分に皮が再生してジクジクがなくなると、茶色い色素沈着となって治ります。目や鼻、口周りから症状があらわれることが多く、そこから体の色々な部位に広がっていきます。また、夏季の暖かい時期にみられやすく、7歳未満の子どもや赤ちゃんに多く発症します。

痂皮性膿痂疹（かひせいのうかしん）

水疱性膿痂疹と比べると稀なタイプです。原因となる菌は主に化膿レンサ球菌という細菌ですが、黄色ブドウ球菌も同時に感染していることもあります。症状は赤い発疹から始まり、次第に小さな膿疱（膿のたまった黄色い水ぶくれ）ができます。膿疱がやぶれてびらんとなったり、厚いかさぶたができます。皮膚の症状だけでなく、しばしば発熱、リンパ節の腫れ、のどの痛みなどの全身の症状がみられることもあります。水疱性膿痂疹とは異なり、痂皮性膿痂疹は子どもだけでなく全年齢にみられ、また、いずれの季節にもみられます。

とびひの治療

基本的には発疹の数が少なかったり、軽症の場合は抗菌薬（抗生物質）の塗り薬の治療を行います。発疹が広範囲にみられたり、抗菌薬の塗り薬のみで症状が順調に治らない場合は抗菌薬の飲み薬を使用することもあります。
また、とびひを発症する原因にはアトピー性皮膚炎や湿疹、虫刺され、あせもなど、痒みを伴う皮膚疾患があり、痒みを訴えている場合や、掻きむしっている場合にはそれらの皮膚炎の治療も同時に行う必要があります。通常はステロイド外用薬を併用することで皮膚炎も一緒に治療します。

とびひの治療中におけるポイント

・塗り薬以外にも毎日の洗浄が大事な治療になります。患部には大量に増えた細菌がいるため、石けんやボディソープなどを泡立てて患部をやさしく洗い、シャワーでしっかり洗い流すようにしましょう。そうすることで患部の細菌の量を減らすことができます。
・患部を触ったり、掻いたりすることで病変が広がり、治癒が遅くなってしまいます。なるべく患部は触らずにガーゼで覆うようにし、痒みがある場合は皮膚炎の治療も並行して行うことが大切です。
・とびひの原因菌である黄色ブドウ球菌は鼻の穴の入り口あたりに多くいるため、鼻をよく触る癖があるお子さまは皮膚炎や傷ができた場合は、早めに治療することでとびひを発症するリスクを減らすことができます。なるべく鼻の穴や周囲を触らないようにすることも大切です。
・とびひは患部に接触する以外にも、タオルや衣類からうつる場合もあります。そのため、とびひを発症した人とのタオルの共有は控えるようにしたり、タオル、衣類はこまめに洗うようにしましょう。なお、洗濯は一緒にしても大丈夫です。
・爪が長いと皮膚炎を掻いた時に皮膚が傷つきやすくなります。爪は普段から短く切って整えるようにしましょう。

通園、通学に関して

とびひや手足口病、水いぼなどの学校感染症については日本臨床皮膚科医会・日本小児皮膚科学会・日本皮膚科学会・日本小児感染症学会から統一見解が出されています。
それによると、とびひに関しては「病変が広範囲の場合や全身症状のある場合は学校を休んでの治療を必要とすることがありますが、病変部を外用処置して、きちんと覆ってあれば、学校を休む必要はありません。」とされています。
すなわち病変がガーゼなどで覆えて他の児童への接触感染を予防できる状況であれば、治療をしながら通園、通学は可能ですが、病変が目、口、鼻周りなどガーゼで覆いにくい部位であったり、症状が広範囲であったり、熱やだるさなどがある場合は通園、通学はせずにお休みとしたほうがよいでしょう。