
ウイルス性イボ
ウイルス性イボ
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イボとは皮膚の一部が盛り上がってできる小さいできものの総称です。主に手足や顔によくみられます。俗に言うイボは大きく分けてウイルスが皮膚に感染して発症するウイルス性イボと加齢や紫外線に伴って発症する老人性イボに分かれます。
こちらのページではウイルス性イボについて説明していきます。
ウイルス性イボは医学用語では尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)といい、ヒトパピローマウイルスというウイルスが皮膚の小さい傷から感染することで発症します。
ヒトパピローマウイルスにはおよそ250種類ほどの異なるタイプがあると言われ、ウイルスのタイプによって感染しやすい部位やイボの見た目、病名自体も変わってきます。
そして、いずれのウイルス性イボもウイルスが皮膚に接触して感染するため、イボがあるところを触ってしまうと、触った手を介して別の場所にうつる可能性があります。よって、自分や他の人にイボを広げないためにも、イボはなるべく触ったりいじらないようにすることが大切です。なお、ウイルスが皮膚の傷から侵入、感染してからイボとして発症するまでにはタイムラグがあり、潜伏期間(せんぷくきかん)と呼ばれます。ウイルス性イボの潜伏期間は3~6か月といわれているため、治療後の再発にも注意しなければなりません。
ここではヒトパピローマウイルスのタイプにより異なるウイルス性イボを病名ごとに分けて症状、特徴などをみていきます。
ウイルス性イボの中で受診される患者様の90%以上を占める、最も頻繁にみられるタイプのイボです。数mmから1cm程度までの硬く小さい盛り上がりとしてみられ、手足(手のひら、足の裏、手足の指、爪の周りなど)によく発症します。手や足の甲などでは盛り上がるイボとなりますが、足の裏は盛り上がらずに平面状の発疹としてみられます。ウイルス性イボはウイルスが皮膚に接触することで感染するため、1つだけのこともあれば、放置することで多発したり、集まって融合して盛り上がった面を作ることもあります。また、通常は痛みなどの自覚症状はほとんどありません。ウイルス性イボは子どもから大人まで幅広い世代でみられ、子どもの患者様は全体のおよそ3分の1を占めます。表面がざらざらとしているため、一見するとタコやウオノメに見えることがありますが、最終的には発疹の見た目やダーモスコピーという機器を用いて病変を観察することで鑑別することができます。特にお子さまの手足にタコやウオノメのような発疹がみられる場合はウイルス性イボであるケースが多いです。
若い年代の女性によくみられるタイプで、顔(おでこ、頬、フェイスラインなど)や腕、手の甲に平たく盛り上がった円形のぽつぽつが多発することが特徴です。通常自覚症状はありません。顔の引っ掻いた傷などからウイルスが感染することで線状にイボがあらわれることもあります。扁平疣贅は顔にできやすいため、同じく顔のぽつぽつとしてみられる汗管腫(かんかんしゅ)、脂腺増殖症(しせんぞうしょくしょう)、ミリウム、老人性イボ(脂漏性角化症:しろうせいかくかしょう)との鑑別が必要となる場合があります。扁平疣贅は一部のケースでは経過観察のみで時間とともに自然治癒することがありますが、中には時間がたってもなかなか改善しない場合もあり、顔に多発するケースではしばしば見た目の問題を抱えることがあります。しかし、イボの治療にともなって逆に色素沈着や赤みなどの痕が残る可能性もあるため、治療を行うかどうかも含めた判断が必要となります。
子どもの足裏によくみられるタイプで、面状に盛り上がった形で中央が少しへこんでいることが特徴的です。しばしば赤く腫れたり痛みを伴うこともあり、ウオノメと鑑別が必要となる場合があります。
顔や首、体幹にできるタイプのイボで、外側に向かって細長く盛り上がるような突起状の形が特徴的です。イボが細く伸びる形が糸のようであることから糸状疣贅という名前がついています。
ウイルス性イボは手足や顔、首、体幹などの部位によって形や大きさなどに違いがあります。そのため、手足のウイルス性イボはタコやウオノメなど、顔、首、体幹などのウイルス性イボは加齢によるイボを含めさまざまな皮膚にできる腫瘍が鑑別となります。よって皮膚科の診療では、発疹を詳細に観察して評価をするために、ダーモスコピーとよばれる医療用の拡大鏡を用いて診察を行います。これは肉眼で見るよりも多くの情報が観察できるため、正確な診断につなげることができます。
ウイルス性イボの治療には保険適用、保険適用外含めて多くの種類があります。ここでは当院で行うことができる治療方法について紹介します。
液体窒素という空気中の窒素をマイナス196度の液体にしたものを用いた治療です。液体窒素を病変に当てると、病変の細胞が凍結して壊死します。壊死した細胞は時間とともにかさぶたとなって剥がれて取れ、下から新しい皮膚が再生してきます。1回の治療で3回ほど凍結と解凍を繰り返すことで病変の細胞が壊れやすくなります。処置後は凍傷ややけどと同じような反応となりますので、1~2日程度は痛みが続く場合がありますが、水ぶくれや血豆になっていなければそのままの状態で日常生活をしても大丈夫です。一方で、凍結療法による反応が強く起こると水ぶくれや血豆になることもあります。しかし、それだけウイルス性イボの病変に強いダメージを与えている証拠でもありますので、治療効果も高いことが期待できます。水ぶくれや血豆となった場合は症状に応じて適切に対応いたします。皮膚の薄い部分の小さいイボであれば1回から数回の治療で治ることもありますが、足の裏や手のイボは病変も厚くなっているため、月単位の長い治療が必要となるケースが多いです。凍結療法による治療の間隔は、保険適用で治療する場合は5日以上の間隔をあけて月に4回までという制限がありますので、1~2週間ほどの間隔をあけて継続していくことが一般的です。治療間隔を比較した研究では1~3週あけた場合の有効性には明らかな差はありませんでしたが、4週間あけた場合には有効性が劣ったとする報告もあるため、治療間隔は4週間以上はあけないほうがよい可能性があります。
サリチル酸は皮膚の角質を軟らかくして剥離させる作用があるため、イボの原因ウイルスに対する免疫を活性化させる作用があるとされていて、それらの作用によってウイルス性イボへの治療効果が期待できます。
国内ではサリチル酸の軟膏タイプの濃度は5%、10%のものがありますが、足裏の難治性のウイルス性イボなどには効果が不十分であるとされるため、軟膏の場合は補助的な効果と考えられます。そのため、ウイルス性イボに対しては通常はサリチル酸の濃度が50%の貼り薬(スピール膏という商品名です)を使用します。
サリチル酸を液体窒素による凍結療法と併用することでより効果的であるとする報告もあるため、治りにくいウイルス性イボでは併用治療を行う場合があります。
サリチル酸の外用療法による副作用には、過敏症状や赤みなどがあり、子どもでは皮膚が薄いためサリチル酸による副作用が出やすいため、注意して使う必要があります。
サリチル酸の濃度が高いスピール膏を使用するときはイボより少し小さめに貼り薬を切って貼付し、入浴時に剥がしてから軟らかくなった角質を削り、毎日貼りかえるといった使い方をします。イボのない部分にサリチル酸が強く作用すると皮膚がめくれてジクジクとした痛みを伴う状態になったり、ふやけた皮膚にイボが広がってしまうことがありますので注意しましょう。
ヨクイニンはハトムギの種皮を除いた成熟種子を乾燥させた生薬で、免疫調節作用によりイボの原因ウイルスに対する抗ウイルス作用が期待される治療です。副作用には稀にお腹の不快感や下痢、痒みなどがありますが、ほとんどが軽い症状のみです。ウイルス性イボへの治療効果は強くはありませんが、痛みは伴わないため子どもでも安全に行える治療で、成人よりも子どもで有効率が高かったという報告もあります。顔に多発する扁平疣贅の場合は液体窒素による凍結療法などの侵襲的な治療で色素沈着のリスクがあります。そのため、まずはヨクイニンエキスの内服療法から始めることがあります。ヨクイニンエキスはウイルス性イボにも保険適用があり、他の治療と併用して行うことができます。
ウイルス性イボは皮膚の角化細胞という細胞に感染しますが、ビタミンD3はこの角化細胞の増殖抑制作用、アポトーシス誘導作用(アポトーシスとは細胞自らが死滅する現象です)があるため、ウイルス性イボへの治療効果が期待できます。使用方法としては1日1回イボに外用した後にスピール膏(サリチル酸の貼り薬)やラップ、絆創膏などで密封すると効果が高まるとされます。ただし、活性型ビタミンD3の外用薬にはウイルス性イボに対しては保険適応はありません。
Vビームは血液中のヘモグロビンという物質に反応して血管を破壊する効果のあるレーザー機器です。ウイルス性イボの内部では血管が豊富となっていて、増えた血管から酸素、栄養を受け取ってイボが成長しています。よって、Vビームによりウイルス性イボの栄養血管を破壊することで栄養供給を断ち、イボを死滅させる効果が期待できます。
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