
巻き爪・陥入爪
巻き爪・陥入爪
爪が食い込んで痛みがある、爪が巻いているなどの爪トラブルは比較的よくみられますが、まとめて巻き爪として認識されているケースが多くあります。しかし、厳密には巻き爪以外にも陥入爪(かんにゅうそう)という疾患もあり、巻き爪として来院される方の中には実際には陥入爪と診断されるケースも多くみられます。ここでは陥入爪と巻き爪の原因、症状、治療についてみていきます。
陥入爪とは爪の端が棘のようになって皮膚に食い込むことで炎症をおこしている状態です。そのため、陥入爪では程度の差はありますが、必ず痛み、赤み、腫れなどの炎症に伴う症状があらわれます。また、陥入爪の原因として巻き爪のように爪が過度に湾曲しているかどうかは関係なく、通常程度の爪の湾曲でもよくみられます。
一方で、巻き爪とは爪の湾曲の程度が通常よりも過剰になっている状態です。巻いている爪が皮膚に食い込むことで痛み、炎症をおこすことはありますが、必ずみられるわけではなく、むしろ巻き爪では痛みがないことのほうが多いです。
このように陥入爪と巻き爪は別の疾患ですが、両者が合併しておこることもしばしばみられます。
陥入爪の原因として多いのが爪切りの際の深爪です。爪の両端を必要以上に切ってしまうと、深く切られた爪の角が伸びてくる際に、側爪郭(そくそうかく)という爪の脇の部分の皮膚に食い込んで刺さりやすくなってしまいます。そして、いったん爪が棘状に側爪郭に刺さってしまうと、以降は爪が伸びるにつれてどんどんと刺さってしまうため、痛み、炎症が慢性的に続いてしまいます。この棘になっている爪の部分を爪棘(そうきょく)といいます。陥入爪の他の原因にはオーバーサイズネイルというものがあります。これは足の指の幅に対して、爪の横幅が広すぎることを指します。オーバーサイズネイルでは爪の脇の部分の皮膚に爪が食い込みやすい状態ですので、治療をしても陥入爪を繰り返しやすいケースがしばしばみられます。
巻き爪の原因にもさまざまなものがありますが、多くの原因に共通していることは足指の底面からの力が不足してしまうことです。爪は本来は内側に巻いていく性質がありますが、足が地面にしっかりつくことによる底面からの力が爪が巻く性質への抵抗力となり、爪は適度な湾曲を保っています。しかし、外反扁平足や凹足などの足の骨格の変形や、寝たきりや車いす生活などはいずれも足の指に地面からの力が適切にかからなくなってしまい、巻き爪の原因となってしまいます。その他にもサイズや形が足に合っていない靴(先端が窮屈な靴やハイヒールなど)も足や爪に不自然な力がかかることで巻き爪の原因となることもあります。
陥入爪では爪の脇の部分の皮膚(側爪郭)に爪が食い込んで刺さっている状態です。それにより側爪郭に炎症がおこり、赤く腫れて痛みを感じるようになります。症状が慢性化したり悪化することで、次第に肉芽(にくげ)という赤くみずみずしい見た目のしこりがあらわれることもあります。
巻き爪では爪の先端側にいくにつれて爪が過剰に湾曲していきます。通常は爪の両側が巻いていることが多いですが、足の状態によっては爪の片側だけ巻いている場合もあります、また、爪が巻いているから必ず痛みを伴うわけではなく、巻いている爪が皮膚に食い込んだり、刺さったりしていれば痛みや炎症がおこることがあります。
当院では巻き爪の治療として超弾性ワイヤーによる矯正を医師が行っています。
ワイヤー矯正法とは、超弾性合金ワイヤーを用いて行う矯正法で、爪の弯曲に沿って曲げた状態で爪にワイヤーを設置します。そして、曲がったワイヤーが元に戻ろうとする力を利用して、過度に湾曲した爪を平らに戻していく方法です。ワイヤーを爪に通すために穴を開ける必要がありますが、痛みなく穴を開けることができますので、施術全体を通して無痛で終わり、麻酔を使用することはありません。施術自体は5分程度と短時間で行うことが可能です。
当院ではオニックスワイヤー®によるワイヤー矯正を行っていますが、オニックスワイヤー®はワイヤーの種類が豊富なため、様々な状態の巻き爪に対応することができるという点が特徴です。
陥入爪の治療は当院では大きく分けて3つの方法で行っています。①テーピングや軟膏処置、液体窒素を用いた冷凍凝固による保存的な治療、②陥入爪の原因となる皮膚に食い込んで刺さっている爪棘だけを切除する外科的な治療、③フェノールという薬品を用いて爪を処理する治療です。
陥入爪を発症してから初期であったり、症状が軽度である場合はテーピングや軟膏処置のみで症状がよくなる場合があります。テーピングは棘となって皮膚に食い込んでいる爪を皮膚から引き離す方向におこないます。(詳細は診察時にご説明いたします)また、軟膏処置は組織の炎症を改善させたり、二次的におこる感染症の予防/治療を目的として1日1~2回行う場合があります。テーピングと軟膏処置は同時に行っても問題はありません。また、腫れている皮膚の一部に肉芽というしこりができている場合は、液体窒素を用いた冷凍凝固を繰り返し行うことで肉芽を消退させていく方法もあります。
陥入爪の原因となる皮膚に食い込んで刺さってる爪棘だけを切除する方法です。発症から早期の段階で爪棘が爪の先端側にある場合は、局所麻酔をせずに治療できる場合があります。一方で発症から時間がたっていたり、腫れが強い、肉芽ができているなど症状が進行している場合は局所麻酔をしてから処置を行います。局所麻酔は陥入爪がおきている側の爪の根元の皮膚に行いますが、その際に注射時の痛みを緩和させるために注射部を保冷剤で冷やしてから麻酔をします。その後、爪棘を含む爪の側縁を楔状に切除します。この時に爪の根元にある爪母(そうぼ)とよばれる爪を作るおおもとの組織(爪を作る工場のような役割があります)は傷付けないように爪棘を切除することがポイントとなります。この治療法は爪母自体は傷つけない方法のため、術後に爪の幅が狭くなったり、爪の変形が出る可能性が低い点がメリットとなります。一方で、爪が幅広く平らに近いタイプの爪や、巻き爪では再発しやすい傾向もあるため、術後のケアもとても大切になります。(術後ケアの方法は診療時に詳しくご説明いたします)
フェノールは腐食作用がある薬品であり、これを用いて爪の根元にある爪母(爪を作り出す工場のような組織)を処理する方法です。フェノールにより処理された爪母は壊死し、その部分からは新たに爪が生えなくなります。そのため、陥入爪をおこしている部分の爪の幅に一致した爪母だけを処理します。(爪の一部だけをフェノールで処理しますので、爪が全て生えなくなるわけではありません)部分的ではありますが、フェノール処理をした爪母からは爪が生えなくなりますので、外科的治療による爪母を温存した方法で再発を繰り返す場合などに検討されます。ただし、陥入爪が一つの足指の両側におきている場合、両側ともフェノールによる治療を行ってしまうと、爪が両サイドの皮膚から固定されなくなり、爪が浮いてきたり、厚くなってくる可能性もあるため、通常は片側のみ治療をして、もう片方は経過をみながら別の治療法も含めて検討します。
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